ハーバード公衆衛生大学院 Master of Science (Computational Biology & Quantitative Genetics) を卒業

ハーバード公衆衛生大学院(HSPH)となると、真っ先に頭に浮かぶのはMPHプログラムでしょうか?
しかしMasterコースにも様々な種類があります。そのうちのひとつ、 Computational Biology & Quantitative Genetics (Master of Science)プログラムを今月末に卒業することになりました (85単位とthesis defenseが終わった)。

パートタイムの大学院生として4年間かかりました…
この4年間は、フルタイム学生の50%エフォート + 研究はもちろん100%エフォート + 臨床に約50%エフォート(土日だけに勤務を入れた) (+ あと少しスポーツドクター)= 200強%エフォートは充実し過ぎてました。さすがに(次の一年はだけは)学生をやりません!


プログラム入学前に3つの目標を立てていました。多くの人に助けられ、そのすべて達成することができました。簡潔に、

  1. Computational biologyについて体系的な知識を得る:これは授業だけでは無理ですが、同時に当ラボの研究を通じてフェローの先生方から教えてもらいました。まさに当ラボの領域ですから
  2. 該当分野で最前線にいる研究者をみつけてコラボレーターとする:遺伝統計学のエキスパートであるLiming Liang教授をクラス後に(逆?)リクルート。彼は僕のとったクラスの教師だった。その後、共同研究(ここまで12+本の論文を共同執筆)だけでなく、一緒にR01グラントを獲得して進行中
  3. 優秀な学生・ポスドクを発掘・育成:このゴールを達成したのが一番の誇り。僕のとったクラスのteaching assistantだった通称 ”ZZ” をリクルート(遺伝疫学でPhDをとった後ポスドクをしていた)。彼はまず当ラボのポスドクになり、その後ファカルティーとなりました。今年より僕がメンターとなってNIHトレーニンググラントを取っています

このComputational Biology & Quantitative Genetics (通称 ”CBQG”) プログラムはHSPHでもマイナーかと思います。
日本語情報もどうやら皆無。

簡単にCBQGプログラムのポイントを紹介します。

  • Computational BiologyとQuantitative Geneticsの2つのトラックがある
  • 規模10-12名ほどの小さなプログラム。僕のクラスは80%ほどが中国・韓国のいわゆる「トップ大学」を出た留学生でcomputer scienceのバックグラウンドが多数。残念なことに日本人はいない。MDも僕1人だけだった
  • 合計80単位 + thesis (defenceあり)のプログラム (MPHは45単位なので約2倍の量)。フルタイムなら2年間かけて卒業。内容はまあまあdemanding (僕の過去のMPH経験と比較して)
  • 基礎として(日本の)大学1-2年生程度の数学・統計知識とプログラミングの素養は必要
  • 必修は20単位程度。上記の数学・統計知識はあるものと仮定されている
  • 卒業要件として一年間のmentored research & thesisに10-20単位が割り振られる

CBQGプログラムの3つの長所

  • 何よりもマイナー。学生・留学生に知られていない(少なくとも僕が入った頃には新しく無名だった)。これは重要。学生・留学生に人気のある領域ー例えばMPH や「機械学習・AI」ーでは先行者利益はすでに失われ、学位をとってもコモディティ化するであろうred ocean。研究者のキャリア戦略として(ビジネスでも同様でしょうが)、10-20年後のビジョンを持ち、リスクをとって人気のない「けもの道」を歩く必要があります。一方で平均的日本人はすでに人気のある分野が好きですよね
  • プログラムの自由度が高い。選択科目で50単位くらいまで取れる。ハンドブックでは選択科目の推奨リストが載っているが、justifyさえできればどんなクラスをとっても許可された
  • 選択単位を利用してHarvard大学(ケンブリッジのほう)やMITのクラスもとれる。僕も50%くらいはHSPH「外」のクラスをとっていた。もっとも勉強になったのはHarvard大学 (HSPHでなく) 統計学科の確率理論および数理統計のクラスたち。これらはHSPHの2倍以上はきつく本格的で毎週の宿題に20時間くらいかけてが身になりました。最先端の研究をやっていると「確立された」手法はありません。この際、数理統計の基礎にbuild onして、自分なりに応用する力が必要なのです

CBQGプログラムの3つの短所

  • 80単位 / 2年間はかなりの金銭的・時間的コミットメント。正直60単位で十分だと思う。とくにMDで臨床トレーニング後の人には多すぎる
  • ある程度の研究経験がある場合はmentored research & thesis制度が不要。ここに10-20単位を割くのは学費が無駄(なので僕は最低限の10単位だけを振り当てた)。自分で研究室とメンターみつければ学費かからないですよね。。。
  • 内容は充実しているとはいえ、結局は授業に過ぎない(これはどんな大学院・プログラムでも同様)。授業で「泳ぎ方」を学んでも、畳の上の水練。医学部を卒業しただけでは臨床プラクティスがほぼできないのと同じですね。この領域の研究者になろうとするならば、並行および卒業後に(最低2-3年は)しっかりメンターについて研究をする必要があります。これは以前のHSPHでMPHをとって研究者になる記事で考察しています。

以上は僕のバイアスに基づく意見です。あまりあてにしないでくださいね。
CBQGプログラムに関しての詳細はHSPHのホームページをどうぞ。

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