リサーチフェローとして活躍するための三つのスキル:その一

まだ半人前の研究者ですが、僕の5年の研究下積みで役に立った(またメンターの視点から見えてくる)リサーチフェローとして活躍するためのスキルをいくつか紹介していきたいと思います。

まずは、あまり語られることのないけども、極めて重要なスキルがあります。それはアカデミックライティング。これは基礎中の基礎です。サッカーで例えるならば、ちゃんと走ることができるか、という話です。

リサーチフェローのアウトプットを考えてみましょうー論文の執筆、研究プロトコール執筆、グラント申請。さらには日々のemailでのコミュニケーション。研究者の仕事・資源の多くにアカデミックライティングが必要です。

ここで、あなたのボスであるメンターの立場に立ってみます。上記のリサーチフェローのアウトプットをスーパーバイズし、それに手を入れることは彼らの日々の仕事の多くを占めます。そこでフェローの英語の手直しをする(もしくは書き直す)というのは大きな手間とeffortになります。ここができていないと、より本質的な研究内容のフィードバックまで辿り着かないんです。したがってアカデミックライティング能力が低いフェローには、研究内容への指導の割合が減ってしまいます。さらには手間がかかるゆえに敬遠されることさえあります(つまりフェローとしては仕事のチャンスが減ってしまう)。シニア研究者が声を大にしてこれを言うことはあまりないけど。しかしこんな一言を聞いたことはありませんか?ー”I like working with him/her because he/she’s a good writer”… その逆が意味することは何でしょうか?

多くの日本人研究者が英語が得意でないと感じています。多くの場合は会話能力について。しかし研究者の英会話は訛り丸出しおよび英単語を並べるだけのブロークンイングリッシュでも許容されます(内容さえしっかりしていれば)。その一方、アカデミックライティングには一つの妥協も許されません。論文に多くのtypoがあれば、研究にも注意が行き渡っていないと判断されます。そしてそれはempiricalに正しいことが多い。。。

でも朗報ですー実はアカデミックライティングこそ能力開発がシンプルで、しかもnon-native speakersでも十二分に勝負ができる分野です。というのはnative speakers(もしくは帰国子女)であってもアカデミックライティングはできないからです。これはアメリカの医学部、MPH、PhD過程の卒業者でもまずできません。というかnative speakersは思いついたまま文章を書いてしまうために、アカデミックライティングが逆に難しくなっている可能性があります。

アカデミックライティングは(メンターや専門書から)多くのルールと作法を学び、一つ一つの文章とロジックに日々気をつけることでしか身につかないスキルなのです。筋トレと同じです。参考になるかはわかりませんが、僕の用いた方法を紹介します:

  1. メンター(アカデミックライティング能力の高い)の論文の文章をストックする(自分の引き出しを増やしておく)。
  2. 同じく、メンターに直された文章は一つ一つ確認して、その作法とルールを学ぶ。Wordで修正をアクセプトするだけ、というは避けたほうがいいです。修正点から学ばないと、「同じ間違いを繰り返す」ことになり、メンターにも同じ心象を与えませんし、長期的に学べませんよね。
  3. 文章を書く際は、一つ一つの単語、文節、文章の選び方と並びに根拠をもてるように書く(つまり思いついたままには書かない)。最初は手間がかかりますが、これは基礎体力をつける反復練習です。
  4. アカデミックライティングに関する書籍からルールと作法を学ぶ。

オススメの二冊
Essentials of Writing Biomedical Research Papers
アカデミックライティングの論理的な方法について。とくに第1章はオススメです。僕がメンターから教わったことがそのまま書いてありました。数時間の投資が一生の財産になりますよ。

The Elements of Style
こちらは英語のスタイルについて(native speakersもここら辺は結構いいかげん)。何十年も続くロングセラー。薄い本でおすすめ。例えば、あなたはセミコロン “;” とコロン “:”の使い分けがきちんとできますか?

他にも参考なる資料があれば紹介してください。

アカデミックライティングへの投資は間違いなく大きなリターンがあります。

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