僕らの未来の働き方を考える

「影響をうけた本は何ですか?」という質問をときどき受けます。この問いに回答するのは難しく、それにはいくつかの理由があります: 1) たくさんあるのでとても選べない、 2) 人生のタイミングや人それぞれの感性によって受け取り方はかわるので一般性はたぶんない、3) 自分がどんな人間か(というか理想?)がバレるので気恥ずかしい、あたりでしょうか。といっても20年以上読み続けてきたのは以下の二冊です。
– Marcus Aurelius AntoniusによるMeditations (『自省録』ですね)
– 三島由紀夫による『葉隠入門
ただし、こんな本をあげてもきっとうけないので、
代わりに最近読んでおもしろかった二冊を紹介します:


まずはリンダ-グラットンによるThe 100-Year Life: Living and Working in an Age of Longevity。和訳である『LIFE SHIFT (ライフ・シフト)』のほうがいい題名ですね。

その問題意識は、100年近く生きる時代において従来型の単純な3ステージの人生ー1) 20歳台前半までに教育を終え、2) 60歳台まで労働し、3) 十分な金銭的余裕をもってゆっくり引退生活を送るーという人生設計はもう期待できない、ということです。一方で、寿命及び健康寿命が伸びることは、みずからの価値観や希望に沿った多彩で自由な生き方ができる可能性を与えます。しかし、後者のような生き方をするには戦略準備が必要。長い人生を充実させるには、以下の3つの「形のない資産 ”intangible assets”」 を管理・メインテナンス、および積極的に資源を投資する必要がある。そして変身することを前提に人生を設計する、というあたりがメッセージとなります。

3つのintangible assetsをざくっとまとめると、
1. 生産資産
– スキルと知識:とくに汎用的で経時的に価値が減衰しないもの
– 仲間・人脈(職業上の社会関係資本)
– 評判・ブランド(公正さ、誠実さ、実行力、柔軟性、信頼性)
2. 活力資産
– 健康 (肉体的・精神的)
– 心理的幸福感
– 自己再生のコミュニティー・友人関係(前向きな友人たちのネットワーク)
– 家族との関係
– バランスのとれた生活
3. 変身資産
– 自分についての知識・アイデンティティを確立する(リベラルアーツですね)
– 多様性に富んだネットワーク(あなたのことを最もよく知っている人はあなたの変身を妨げる可能性が高い。あなたが変わらないことに多くの投資をしているから)
– 新しい経験に対して開かれた主体的な姿勢を持つ

となります。おすすめの一冊です。


次は同著者による The Shift: The Future of Work is Already Here。これも和訳の『WORK SHIFT (ワーク・シフト)』というタイトルは秀逸です。

これは2011年の時点で「2025年の未来の働き方」を予測するという内容。そしてその未来に備えるためにどのような「シフト」が必要かを議論しています。そこでは1) 連続的に知的資本を強化しつづける、2) 自己再生のコミュニティーをもつ、3) 自分を理解する、という3点をあげています。驚くのは、その2025年の未来予想図が、現時点2021年のうちにかなりいい線をいっていることです。

ただし、だからといってこの先の未来が同著の連続的な延長線上にあるとは限りません。僕が思うには、むしろ同著で使われたフレームワークと材料(これは自分で読んでみてください)を使って自分なりに未来を描くことにより意義があるはずです。なぜなら、万人が予測する未来にたいした価値はなく(差別化の戦略をとれないし)、予測できない未来にこそ価値があるからです。

上に挙げた『LIFE SHIFT (ライフ・シフト)』は、同著を発展させているので、読みやすさ・ロジックなどが向上しています。こちらは二冊めとしておすすめです。

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