批判をしてもらう

批判的なフィードバックをもらうのは、ときどき辛いものですよね。ただし歳をとると、わざわざエネルギーを使って僕の身になって批判的(しかし建設的な)フィードバックをしてくれた人のありがたみがわかります。いま思えば、レジデンシープログラムでもらったフィードバック(いまでも保存してます)のうち「宝物」なのはそうした批判的なフィードバック。”Rockstar”, “hard working”や “enjoyed working with him” のような安易なフィードバックに妥協せず、僕の身になって”Kohei has some gaps in AAA”などと正直にコメントしてくれた当時の指導医(今は同僚…)には感謝しかありません。もちろん、自信がついてないうちはポジティブなフィードバックがよかったりと、個人の性格やそのcontextによる部分はあると思います。


ところで本題です。年次があがって「シニア」とみなされるようになると、以前のような批判的フィードバックを受ける機会が少なく、というか無くなります(注: 奥さんからの批判は反比例に増加)。きっとよくいる「イタい大人」になっているのでしょう。本人としては10年前より「偉くなってる」気は全くないし、今でも欠点だらけなのはよく知ってます。しかしフェロー・レジデントが上司と面を向かって批判するのはむずかしいですよね。とくに東アジア文化では年長者へのrespectが先に来てしまいますし、僕自身もそうなのでよくわかります。ところで、フェロー第1期生の後藤先生は、長いあいだに培った信頼関係と率直な人柄もあって、ときどき僕に「ダメ出し」をしてくれていました。これらはとてもありがたかったし、そんな彼を尊敬しています。

ではどうしたらいいのでしょうか。ひとつは後輩が上司に率直に意見を言える信頼性(ないとどうにもならないですよね)・職場文化心理的な安全を培っていくことですよね。もう一つは「批判をして」もらえるsettingを自らつくっていくこと。後者を僕はときどきmentorsに頼んでいます。つまり、批判をしてもらうことが唯一の目的であるmeetingをセットアップします。


先月はひさしぶりに10年来のメンターであるCarlosとそんなmeetingをセットしました。彼も「一人前」になった僕を面と向かって批判するのはconfortableではないのですが、始まればけっこう盛り上がり(?)ます。今回は3点のフィードバックをもらいました(以下)。自分でも気付いていたことだけでなく、あまり問題にしていなかったことの両者がありました。

  1. Administrative skillsを強化せよ: EMNetではCarlos(および多くの他のスタッフ)が多くのadministrative的仕事(雑多な多くの総務・会計・人事な仕事)を引き受け、僕がサイエンスを引っぱりグラントを取ってくるという分業でやってきました(それがとてもうまくいってきた)。しかし、PIは個人事業主(中小企業)の側面があります。これら「非サイエンス」側面からいつまでも逃げばかりではいられないのです。

  2. ミーティングでもうすこし優しくあれ:僕は遠慮がないので組織のミーティングでずけずけものを言う(または興味をまったく失ってしまう)ことがあります。これには「ミーティングの目標をよく考え、しっかり貢献せよ」と核心をついたフィードバックをもらいました。まさにそのとおりです。

  3. Speakingをnativeレベルにせよ: これはちょっと予想外でした。臨床でも研究でも英語ではあまり困ったことがなかったし(自分がそう思っているだけかも)、研究者に最重要な英語スキルはwriting能力からです。米国でも研究者に外国出身者が多く、酷くないアクセントならば(もちろん、中身があれば)問題になりません。しかしCarlosに「いまでも、この国には外国出身者にたいする差別が隠れている。この国で一流になるにはspeakingもnativeと同等にならなければいけない」という言葉をもらいました。これは盲点でした。いまではフィードバックにそって、英語発音のアプリ(ELSA Speak; とてもオススメです)を使って毎日30分練習しています。渡米して13年、まだまだ伸びる分野が見つかって楽しんでいます。

時間とエネルギーを割いて批判点をつたえてくれたCarlosには感謝しかありません。

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