前回のブログ記事で紹介した Zero to One (ピーター・ティール著) の翻訳者である瀧本哲史氏。
その代表作が本著『僕は君たちに武器を配りたい』。
久しぶりに本棚から引っ張り出して 読みました。
瀧本氏は残念ながら若くして故人となっています。しかし、そのメッセージは10年たった今でも健在。
一言でいえば「若者が残酷なグローバル資本主義社会を生き抜くための、サバイバル(ゲリラ戦)のすすめ」ということになります。
気持ちの若い人、とくに大学医局のように伝統的な文化のなかで働く方、にはインパクトのある本だと思います。
いくつか印象に残った言葉をあげます (原文をすこしまとめてます):
- グローバル化社会では、必死に勉強して「高度なスキル」や資格(例:医師免許、MBA)を身につけても、すぐに「コモディティ化」しワーキングプアになってしまう。
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コモディティ化しない「儲かる漁師」には、以下の6タイプある。
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しかしそのうちの2タイプ、モノを右から左に移動させる「トレーダー」、専門性とスキルだけを追求する「エキスパート」(産業の変化スピードが速いために) は徐々に価値を失っていく。
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次の4タイプ(およびその組み合わせ)が生き残る道である。
- 顧客を再定義し、商品にストーリー・ブランドなどの付加価値・差異をつける「マーケター」。しかし、 ユーザーにわからない差異は差異ではない。
- 既存のものをまったく新しい組み合わせて仕組みをつくる「イノベーター」。ここでは専門性および横断性がカギとなる。
- 起業家となりマネージする「リーダー」
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投資家として市場に参加する「インベスター」。本質的な「投資」とはカネの投資ではなく、自分の労働力・スキル・人間関係を投資すること。
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才能がある人、優秀な人は、パイを大きくすべきだ。パイ全体が縮小しているとき、分配する側に優秀な人が行っても意味がない。誰が分配しようが、ない袖は振れないからだ。
興味を持った方は、一読をおすすめします。
非常にインパクトのあるメッセージです。しかし個人的には本著に残念なところが一点あります。 この本の意図するところががリアリズムであるゆえ、仕方がないとは思いますが:
リベラルアーツ・教養の重要性を謳っていながらも、本著自体の思想に人間性・社会のあり方への洞察・深みはあまりない。
「勝ち組」となり自己の便益を最大化することだけが人生の目的で、勝てなかった人のことを顧みないことが倫理的な社会のあり方なのでしょうか。そもそも社会構成員すべてが同じアプローチをとったとすれば、社会が不安定化し、自らの便益を最大化できない可能性すらあります。
言い換えれば、本著のメッセージが「グローバリズム・資本主義というゲームのルールのなかで、一人のプレイヤーとしていかに最適化し効率よく勝ち残るか?」に限定されてしまっている。とくに若い人たちにはここでは終わって欲しくはないと思う。夢がない。
人間らしく生きるとはどういうことなのでしょうか?
自分の見てみたい世界を作るために既存のルールを変えること、ゲームチェンジャーになること、パラダイムシフトをおこすこと。
「武器をもってゲリラ戦」を起こす真の目的は、むしろこれら?
その目的を達成するためには違う武器のセットが必要なはず。
それは未来を描く力であり、自分と異なる人を巻き込み組織化する力であり、合意形成のために交渉する力だと思います。
いつも素敵な本の紹介をありがとうございます!早速電子書籍で購入し読んでみます。
私の生きる道はイノベーターしかないと考え(リーダーは全く向いていない)、知の探索を続けています。
Gibo先生ありがとうございます!沖縄は忙しそうですが。。。
戦略的に自分のバックグラウンド・性格・強みを活かしていくところに活路がありそうですね。ほかにもおすすめの書籍などありましたらまた教えてください。引き続きよろしくお願いします。
最近読んだ本で一番のお勧めは(すでに読まれたかもしれませんが)
今泉 允聡 「深層学習の原理に迫る:数学の挑戦」岩波書店
です。多分先生の嗜好にも合うかと。
どうもありがとうございます!早速注文しました。すでに楽しみです。