ボストンの危機からはや一年

この一年はあっという間でした。
去年の4月頃は、MGHにCovid-19の大波が押し寄せてきた頃でした。ニューヨークなど僕らより大変な場所もあったでしょうから「俺らの救急外来は戦場だった」みたいなことを言うつもりはありません。むしろMGHはリソースが豊富ですし、2020年1月から準備を整えていたため、むしろ僕は恵まれていました。

とはいっても、ボストン市東側にあるMGHが MGH/Brigham (昔のPartners)病院システムの重症患者の7-8割を受け持ったのは大変でした。これはボストンの東側(East Boston, Revere)や北東にある地域が重点的にCovid-19にやられたためです。ある8時間シフトでは10症例以上の気管挿管 をしたのはさすがに異常事態でした (MGHのICUには最高で170人以上入院していた)。。。

Covid-19以前より、うちの病院はBrigham and Women’s病院などと比べて2倍近くの患者数と重症度があります(なのでレジデントに人気がある)。しかし2020年4月のデータを見ると、Brighamは1日あたり1-2例の挿管だけで済んでいたようです (Brighamは市の西側にある)。この重症Covid-19の地域差・施設差はきわめて大きく興味深いですね。今でも同じ傾向は続いています。

ただし救急医としての仕事内容が大きく変わったとは思いませんし精神衛生も良好でした。僕らは日々の仕事がuncertaintyと危機対応。非常事態への心構えは、2011年に災害派遣でボストンから気仙沼に行った時に経験が活きてきました。さらにPandemicとの戦いに直接的に参加している、そして生の情報に触れ続けるというのは心理的にもプラスだったはずです。いちおうウイルス呼吸器感染症の研究者だからサイエンスもわかるし。。。

しかしながら、ボストン・米国に来ている留学生は対面授業がなくなってしまったり情報不足だったりと大変だったはずです。当ラボのリサーチフェローの先生方とご家族(とくに子供たち)も不安だったかと思います。役に立ったかは不明ですが僕から常に生の情報は共有していました。例えば、MGHの日々の患者数やICU対応能力 (人工呼吸器は300症例まで対応可能)などです。

日本の近況は心配の種ですが、こちらではワクチン接種数が増えてきています。
当ラボでも少しづつ研究室に戻り始めるプランを作っています。早く新しい形の「日常」生活に戻れるといいですね。

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