NIHグラント審査の振り返り

アメリカの医学研究者にとって、グラントは血液。

自分でグラントが取れなければ思いのままに研究もできなくなりますし、スタッフの給料を払えないので研究室は解散。臨床で生計を立てられない場合は、自分の給料さえなくなります。グラント採択率10%そこら(僕のfunderであるNIAIDはこの程度)のR01を取り続ける自転車操業。。。漕ぎ続けないと倒れます。

そして限られたパイを競いあうグラント申請書を採点するのがグラントレビュー(審査)というお仕事。NIHグラントであれば、基本的にはお声のかかった研究者のボランティアです(準備時間と拘束時間を含めればマックのバイト時給ほどかも)。レビューワーが集まって申請書を一度に審査する場をスタディセクションといい、だいたい1-2日かけて行います(メンバー名は公表されます)。これまで僕がやってきたのは上記R01グラントのレビュー。

以前のブログでも少し紹介しています。
グラントレビューの振り返り(備忘録)
グラントのレビューを疑似体験


さて今回僕が行ったのは、少し毛色の違った “Uメカニズムグラント”のスタディセクション。R01グラントは研究者が主導して自由度を持って研究するのに対して、UメカニズムはNIHとの共同作業の側面があります。ゆえにNIHも気合が入っていますし、金額も大きくなります。うちの研究室の一つの柱であるMARC-35もU01グラントから始まっています。

今回のUグラントは、各申請書がサイエンスセクションだけで約50ページ (R01の3-4倍の長さ)。他にバイオスケッチ、予算、レターもろもろ含めると500 pages強。かなりの労力でした。ただしR01グラントは3人のレビューワーが担当するに対して、今回は一つの申請書”プログラム”に対して7人以上が担当かつ中身を分担(これは短所も多い)。

今までのR01スタディセクションの経験と少し違いました。議論内容は機密で書けないですが、ゲームのプレーヤーの視点から見たこのメカニズム特有(およびcompetitive renewal)の対処法(案)を列記します。たとえば、

  • チームの過去の実績をより強く強調する。これがprojectの成功をdriveする最大の因子だと考えられているか?Approachの弱点を補う可能性が高い(それでいいのかという問題もある)。
  • その方法として、以前のfunding cycle(s) の実績がapplicationからダイレクトに伝わるようにする。例えば、メジャー誌に載った論文をcitationするだけではなく(行儀は悪いが)文章中に列記してしまう。例えばチームの論文として “Zhu et al. Nature Genetics , Raita et al. J Allergy Clin Immunol , Liang et al. Nature, …, ….” のようにPrelim data sectionにちりばめる。もちろん過去の同メカニズムfunding cycleで出版した論文数も。
  • 以前のfunding cycleから、いかにbuild on(かつextend)しているかを強調する
  • Innovation section はいつもより強調してもいいのかもしれない。Investigatorsと同様にこれも大きなdriverか。
  • レビューワーが申請書をちゃんと読みこめない可能性があり、研究スキームやprelim dataをしっかりvisual presentationするのが大事。よく練られたfigureは1ページの文章より雄弁。これはいつもと一緒。

最近はラボ外の仕事(例えば上記スタディセクション、NIH committeeのchair、医学部の教育など)にかなりの時間を取られるようになってきました。この業界で頼りにされている(もしくは若くて宿題と準備はしっかりやってくるというだけの評価だけかも?)という面があるのかもしれませんが、自分の研究およびインプットとのバランスが難しくなってきました。

うまくバランスをとりながらも、新たな学びの機会(たとえばリーダーシップとネゴシエーションなどのソフトスキル)および自分の枠を超えた仕事の機会と前向きに捉ようと思っています。

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