若き研究者たちによるエッセイ・小説

僕の道楽は研究(仕事のはず?)、考えること、読書くらい。
基本的に活字があって、知的好奇心が満たされていると幸福度高く生きることができます。逆に会議があると…(以下、自粛)。
奥さんにはおかしいと言われますが、みんな違うのだからいいのでしょう。

最近硬めの本ばかり紹介してきたので、寝転んで読めるような本をいくつか紹介します。どれも若き研究者による自叙伝的作品です。
以下、偏見に基づいた5作。僕が何度も何度も読んでいるmy favorite booksです。


  1. 若き数学者のアメリカ藤原正彦 著

これは研究や留学に限らず、挑戦する若者全ての心に響く古典エッセイ。
夢、希望、挫折、出会い、成長を繊細な感性で綴った自叙伝。

僕はそこそこ辛かったレジデンシー1年目で何度も読み返した本です。また読みたくなってきました。


  1. 孤独なバッタが群れるとき サバクトビバッタの相変異と大発生 前野/ウルド浩太郎 著

「フィールドの生物学シリーズ」(ほとんど全巻持ってる)中の一番の名作。僕が研究を始めて1-2年めに何度も何度も読んだ本(ほとんど内容を覚えてしまった)。ユーモアあふれる若手研究者の科学への真摯な姿勢、歓喜・苦悩、および生き様を見ることができます。僕の(歪んだ)人格形成の一助になった本です。

ただし「虫度」が高いので、やや注意が必要。度数が低めの本であれば同著者による『バッタを倒しにアフリカへ』がおすすめ。タイトルが意味不明ですが、読者を引きつける文章でこれまた素晴らしい作品です。


  1. 裏山の奇人 野にたゆたう博物学 小松貴 著

同「フィールドの生物学シリーズ」はどれも純粋な奇人研究者ばかり。その中でもこの著者は特に純粋。

「わかりたいことを、わかりたい」に突き動かされる著者。
多くの研究者(そして科学少年・少女たち)の北極星になりうる存在に、「世の中へのインパクトがわからない」と近視眼的な便益主義で研究費が出せないようでは、科学立国としての未来はまずありません。

あなたは、最近、子供の時と同じくらい何かに真剣になりましたか?


  1. 喜嶋先生の静かな世界森博嗣 著

研究者を目指す純粋・不器用な学生(ぼく)とそのメンター(喜嶋先生)の自叙伝的小説。
学問の深遠さと研究の純粋さに対して謙虚な気持ちになります。

これは研究歴が8年めに達した今、違う視点を持って読むことができます。むしろ少し年季が入ってから意味がわかる作品なのかもしれません。
PIとなり、会議と雑用の占める割合が年々増え(つまり自分の手を動かして研究する時間が減り)、研究者でなくなっていく恐怖を感じます。これは研究だけしていればよかった数年前には全然わからなかった(それはメンターが必要な雑用を引き受け、僕が研究だけできるようにお膳立てしてくれていたからだったんだ)。

今になって、喜嶋先生のように純粋に科学者として生きることの難しさが痛切にわかります。

「研究だけをする、そのためには他を犠牲にする」、どこまでできるのだろう。


  1. 番外編:数学ガールの秘密ノート/学ぶための対話 結城浩 著

ラノベ風なのでかつてはdiscloseできなかったのですが、最近は普通にベストセラーなので告白します:僕はこの「数学ガール」シリーズのファンです。
この著者ほど、読者(もしくは学ぶ側)の立場に立って文章を書いている人は珍しいと思います(とても勉強になる)。
どれも名作ばかりですが、とくにこの本は「学ぶとは」「教えるとは」という学問の根本問題にわかりやすく取り組む名著です。

学問を修める全ての人におすすめします。


おすすめの本があったら、是非コメント欄を使って教えてください。

1件のコメント

  1. 「若き研究者による」というわけではないですが、似たジャンルでこれまで感銘を受けた本を。以下順序不同

    ①高瀬正仁「発見と創造の数学史」萬書房
     同上  「数学史のすすめ 原点味読の愉しみ」日本評論社
    高瀬先生は数学者・数学史家で、特に近代数学史についての多くの本を書いておられます。語学も堪能でオイラー、ガウス、アーベル、リーマンなどのラテン語で書かれた原著論文を翻訳して多く世に出されています。上記の本のamazonレビューをみていただければ、高瀬先生の思想というかスタンスが透けて見えると思います。私もこの考え方に感化されまして、後を追ってみたいなと。

    ②島岡要「研究者のための思考法10のヒント」羊土社
    章の見出しを拾うと、研究者の幸福学、ブラックスワンに備えること(タレブ「アンチフラジャイル」)、スラッシュのある人生(リンダグラットン「Work Shift」)など、主に欧米で得られている近年の本やエビデンスをさらりと分かりやすく紹介されて研究者の幸福について考えている本で、読んだ当時目から鱗でした。

    ③入山章栄「ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学」日経BP
    「世界標準の経営理論」でバズっている入山先生の本です。彼が紹介している理論が”世界標準”かどうかは少し眉唾ですけど、自身の言葉でかみ砕いて説明しているところは非常に分かりやすいと思います。「世界標準の~」はこれから読みます。

    ④サイモンシン「フェルマーの最終定理」新潮社
    多分先生はすでに読まれているかと思いますが、続く、「暗号解読」「宇宙創成」いずれも若い研究者の心に火をつけることができる名著だと思います。熱中しすぎて本業に影響が出るかも。

    • 宜保先生ありがとうございます!

      2と4は読んだことがありましたが(「フェルマーの最終定理」は名作ですよね)1および3は未読でした。早速amazonで注文してみます。勉強します。

      今後ともご教授ください。

  2. 追記:
    ⑤西浦博「理論疫学者・西浦博の挑戦-新型コロナからいのちを守れ!」中央公論新社
    すみません、これを忘れていました。リスクコミュニケーション、科学コミュニケーションの困難さを改めて思い知るとともに、科学者の熱い思いをひしひしと感じます。

      • ご返信ありがとうございます。
        コロナ禍にあって今年は研究アウトプットが全然出来てないですが、せめてインプットは増やしたいものです。先生にもたくさんインプットをいただいております!

        • 早速、西浦・入山両先生の本読んで勉強しました。

          前者からは研究者としての矜持をひしひしと感じました。襟を正して読みました。

          ありがとうございました!

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