「乳幼児の細気管支炎」は一つの疾患ではないーリピドミクス

今回、藤雄木先生による気道lipidomicsによる乳児の細気管支炎endotyping論文が出版されました(BMJ系列のThorax誌)より。

Nasopharyngeal lipidomic endotypes of infants with bronchiolitis and risk of childhood asthma: a multicentre prospective study


リピドミクス(lipidomics)とはオミクスデータの一つ。複合脂質 (糖脂質、リン脂質、ステロイド化合物を含む脂質の総称)は非常に多様な代謝物。そして機能も多彩ーエネルギー貯蔵、細胞膜の構成要素、免疫反応のメディエーターなどなど。その重要性にもかかわらず、検査自体も簡単ではなく(値段も高い)、他のオミクス(geneticsやmicrobiomics)と比べて地味なことから、あまり注目を浴びてきませんでした。

今回はMARC-35コホートの917乳幼児の重症細気管支炎の検体を使いました。鼻咽頭より982種類のlipidsを同定。それを臨床データ・ウイルス (genotypesも含めて) データと統合しながら、endotypesを導きます(いわゆるclusters-in-clustersというアプローチ)。その後、endotypesが6年後の喘息発症リスクと関連があることを示しています。同時に気道のトランスクリトームデータも統合し、endotypesのメカニズムまで切り込んでいる研究です。


Thorax は臨床より(translationalはあまり好まない)の雑誌です。この論文のように解析が複雑かつメカニズムまで切り込んでいる論文はあまり掲載しない過去がありました。しかし論文自体に工夫を加え、読者にわかりやすく「重症細気管支炎」が一つの疾患でないことを示したことが、結果につながったと思われます。

藤雄木先生とチームー重要な仕事です。おめでとう!

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