自己紹介

はじめまして。
昨年の9月から長谷川研究室でResearch fellowをしています藤雄木 亨真(ふじおぎみちまさ)です。ボストンは朝晩氷点下の日も多くなりましたが、私自身にとっては2回目のボストンの冬となり、身体が寒さに慣れてきました。COVID患者数がまた増えてきましたが、いまのところ新しい生活様式になってからと変わらず過ごせています。

だいぶ遅くなりましたが、まずは自己紹介をさせてください。2008年に大学を卒業し、初期研修後は小児外科医をしていました。2017年から東京大学大学院 臨床疫学•経済学教室で康永秀生教授のもと、主に医療ビッグデータのひとつであるDPCデータベースを使った臨床研究を行っていました。当ラボの先輩である後藤匡啓先生が、東大の研究室にいらしたことがきっかけで長谷川ラボにお世話になることになりました。

小児外科のイメージってどうですか? 「最上の命医(主演:斎藤工)」、「A LIFE(主演:木村拓哉)」「グッド・ドクター(主演:山崎健人、上野樹里)」など結構テレビドラマの題材にも使われていますよね。(イケメンばっかりですね・・・。) 小児外科は主に、食道閉鎖症、鎖肛、ヒルシュスプルング病、胆道閉鎖症、胆道拡張症などのいわゆる希少疾患を専門にしています。年齢による体格差も成人に比べて大きいですし、大学病院や小児病院でも、1年に1例の症例もたくさんあります。ましてや、同じ併存症をもっている症例など数年に一度です。一生に一度だけしか合わない症例もよくあると言われます。それ故、確固たるエビデンスが乏しいのが現状です。
だからといって、決して適当に治療方針を決めているわけではありません。わずかなエビデンスと経験値を有機的に統合し判断して治療方針を決めています。よって、経験値に大きく左右されることが多く、病院ごと、医師ごとで治療方針が変わることが結構あります。(おそらく成人診療科の先生方には想像できないことかもしれませんが、学会発表などみるとびっくりするほど、病院ごとに治療スタイルが違います。)それでも、どの施設でも十分な成績を残していることは間違いないですし、このままでも十分なのかもしれません。外科医の感覚はとても大切だと思いますし、エビデンスがないが故に磨かれた繊細な感覚があるのだろうとも思います。(実はもう一層剥離する、しない、もう1針をかける、かけないという細かい判断をしながら手術しています。)そして、その外科医としての感覚を磨かれた先生方が多くの命を救っているところを何度も見てきました。

でも、もし小児外科にデータに基づいたエビデンスがプラスされれば、どうなるんだろう。治療方針の決定ももうすこし容易になり、治療成績ももっと良くなるに違いない。さらに、いま僕らがやっている治療が正しいということをきちんと証明し、世の中に示さなきゃいけないと思い、康永研究室の門を叩きました。

研究室では多くの研究に携わることができました。また、小児外科疾患だけではなく、成人外科領域の共同研究にも関わらせていただきました。Neuesを創りだすという臨床研究の魅力にとりつかれたといっても過言ではありません。まだまだ日本のビッグデータでやりたいことも多くありますが、次はデータベース研究の先進国である米国のデータベースを使ってみたい、オミクスデータを含めた臨床研究を学びたいと決意し、長谷川ラボで勉強させていただいております。この過程はやや唐突にみえますが、書くと長くなるので次回以降にしたいと思います。なお、留学先を探す過程などは医学界新聞に記事を書いたので興味がある方はご覧ください。

留学後の1年はメタボロームを使った研究を中心に取り組んできました。週に1回の長谷川先生とのミーティング、ラボの皆さんや他施設との共同研究での様々な学びを通して、どんどん研究がブラッシュアップされていく過程を楽しんでいるうちに1年が過ぎてしまいました。次回以降、publishできた論文を少しずつ紹介していこうと思います。

長い人生、頭のどこかで想像しないことが起きることもあることは理解していましたが、それは個人個人のことであって、マスクをして街を歩き、スーパーマーケットの入店には人数制限がかかり、在宅勤務が当たり前になり、簡単に海外(国内の移動も)にいけなくなるという、こんなにガラッと生活様式が変わるようなことが起きるなんて想像ができませんでした。
コロナ禍のような生活が変わるような急激な変化はもう100年ぐらい起きないことを祈りますが、ここから10年も経たずに医療界は劇的に変化しはじめるはずです。耒田先生の記事にあった個別化医療も、限られた疾患を限られた施設だけでやる時代ではなくなると思います。
大規模臨床データ、オミクスデータ、機械学習、疫学(因果推論等)を融合させることで、いままで見えなかった疾患の新たな分類がみえるようになり、個別化医療・先制医療などにつながるはずです。そんな時代の変化についていけるよう、そしてそのパラダイムシフトを楽しんでいける感覚を持っていきたいなと思っています。

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