研究者のためのドラッカー

ずいぶん前に『もしドラ』でも有名になったマネージメント実践の大家、ピーター・ドラッカー。僕も彼の著作をいろいろと読んで勉強をしました(その割には成長していないか)。


研究者(および医者)はドラッカーの言うところの「知識労働者(ナレッジワーカー)」に当たります。ドラッカーは多くの素晴らしい著作がありますが、研究者のキャリアを考えるうえで参考になる一つは『明日を支配するもの』(とくに第5-6章)でしょうか。いくつか参考になる言葉を引用します:

  • 「知識労働者は生産性を所有する。頭の中にしまわれた知識は持ち運びができ、大きな価値をもつ。まさに生産手段を所有するからこそ、彼らの流動性は高い。」

  • 「あらゆる種類の組織にとって、自らの生存は、知識労働者の生産性によって左右されるようになる… 最高の知識労働者を惹きつけ、とどめる能力ほど、最も基礎的な生存の条件となる。」

  • 「知識労働者は、雇われている組織よりも、結果として長生きする… 労働寿命は五十年に及ぶ… これに対し、企業をはじめ組織の平均寿命は三十年そこそこである… しかも今日のような乱気流の時代にあっては、あらゆる組織が、それだけの寿命を保つことさえ難しくなる… たとえ存続しえたとしても、構造、活動、知識、要因は変わらざるをえない。」

  • 「知識労働者のほとんどが、自らをマネジメントしなければならなくなる。自らを最も貢献できるところに位置づけ、つねに成長していけなければいけない」

  • 「自らをマネジメントするためには、自らにとって価値あるものは何かを考えておかなければならない…組織には価値観がある。そこに働くものにも価値観がある。組織において成果を上げるためには、働く者の価値観が組織の価値観になじむものでなければならない… さもなければ心楽しまず、成果も上がらない。」

  • 「知識労働者たるものは、自らの貢献は何でならなければならないかを自ら考えることができなければならない。」

  • 「組織は、もはや権力によっては成立しない。信頼によって成立する…互いの関係について互いに責任を持たなければいけない。」


ラボの経営者(PI)向けには、以下のような言葉が響きます。

  • 「事業とは、市場において知識という資源を… 価値に転換するシステムである。」『創造する経営者』

  • 「事業の定義は三つの要素からなる。第一は、組織を取り巻く環境である。 第二は、組織の使命すなわち目的である。第三は、そのような使命を達成するために必要な強みについての前提である」『チェンジリーダーの条件』

これら3要素は当ラボで言えば以下のようになります。
1. 組織を取り巻く環境:現在・近未来はbig data + computational powerの時代。しかしながら、これらを有効に使い重要な“why?” questionsに答えることのできる科学者・人工知能はほぼ存在しない (前ブログで紹介したEronの論文『統計学を哲学する』でも関連することが述べられています)。
2. 組織の使命: 我々の持つ大規模データ(臨床・疫学・多層オミクスデータ)に統合的アプローチ(例:疫学・因果推論・探索、統計学、統合オミクス、医学・生物学のdomain knowledgeの統合)を適応しprecision medicine/preventionのscienceを推進する。
3. 強み: 我々のコホートの持つ大規模・高密度データであり、excellenceと協力を指向すラボの文化であり、統合オミクス✖︎因果推論研究をリードする優秀なフェローたちです。


他にも良書が多くとても紹介しきれません。。。
とにかく僕はドラッカーの実践的なところが好みです。

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