僕はボストンに救急レジデントとしてやってきました(11年前)。救急医になることが目的で、研究者になるなんて微塵も考えたこともなかった。もちろん、研究という営みの奥深さそして厳しさを知らなかった。アナロジーで言えば、今まで学校の体育で「サッカー」(臨床のトレーニングとMPHのみ)をしていのに、プレミアリーグのサッカーチームに突然入って、プロサッカーのレベルとプロフェッショナリズムを要求されて面を食らう。
若い研究者の情熱、葛藤、および取り組み方を学ぶ手段は多くはありません。幸運にもレベルの高く設定されたラボにいればよし、PhDで真面目に研究をしている友達がいればそれもよし。そうでなければ書籍を読むというのが先人の知恵、経験、および失敗から学ぶ素晴らしい体験になります。読みやすいエッセイを二つ紹介します。
- **孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 前野ウルド浩太郎 著 **
若い研究者の卵が、学部生からPhD学生の過程でどのように研究に真摯に向かい合ってきたか。
研究対象(バッタ!)に対する深い愛情と好奇心に溢れる著者、研究に対する姿勢を背中で見せるメンターの姿。研究と必ずしも両立しない日常生活における葛藤。自然科学の研究者(の卵)の一つのあり方がよく書かれています。僕も研究生活のなかで何度も読み直し、そして勇気を与えてくれたしかしユーモア溢れる本です。
研究対象はなんであれ、好奇心に狩られる本質は同じ。お勧めします。 - **バッタを倒しにアフリカへ 前野ウルド浩太郎 著 **
上記の続編?ともいえる第二作。PhDを終え、facultyポジションを得ることができるか(職業研究者としてアカデミアで生計を立てていけるか)不透明な日常。そのなかで、人生を研究にdevoteする真摯なあり方と情熱を、これまたユーモア溢れる筆跡で捉えています。簡単に読めますが、感動をよぶ文章です。
他にも、「フィールドの生物学」シリーズは、かなりオタクな、しかし好奇心に突き動かされた研究者たちの真摯な生き様を紹介しています。僕の愛読書たちです。研究の原点(僕にとっては好奇心)をあらゆるところで確認できます。