ハーバード公衆衛生大学院の教育を受けてみて(2)

今週HSPHはFall semester(秋学期)のFinal exam weekに突入し、同級生の顔にも疲れが見える今日この頃です。
私もこの秋学期は不慣れな英語の講義ということも含め、忙殺されてしまいました。

自分の反省の意味でどのくらい忙しかったのか、果たして本当に忙しかったのかを少し振り返ってみたいと思います。

私の所属するMPH-QMコースは1年間で合計45単位を取得して卒業となります。
単位のカウントに関して、授業は1コマ110分を基本とし、それが授業毎に週2回*8週間で2.5単位のカウントになります。
講義によってはその内容を補足する目的でLabと称する補講(こちらも110分1コマ)が週1回入ります。
私はこのFallで26.25単位分の講義を受講いたしました。

実際のタイムテーブルはというと月曜日から木曜日まで一日110分講義が3コマ(授業6つ分)入り、金曜日にLabが2コマという構成でした。
日本での学部講義のことを考えると当時は110分講義が月曜日から金曜日まで4コマ入っていました。それを考えればHSPHの講義は楽だったでしょうか?
否。年齢による学習能力の衰えを勘案しても大変だったと言えます。そしてその理由は前回の記事でもふれたように予習復習によるものでした。

peer reviewの文化が根付いているアメリカでは各授業に対して受講した学生の評価が公開され(学内関係者のみ閲覧可)、その中の評価項目の一つにクラス外で費やした学習時間という項目があります。もちろんこれは講義によってまばらなのですが、概算すると各講義につき平均6時間程度のクラス外学習をしているようです。英語が達者でない私はこの1.5倍、場合によってはそれ以上に時間をかけてしまっていました。では単純計算9時間×6授業=54時間をクラス外の学習に費やしたか?恥ずかしながら否。一部の授業については手を抜いた形になってしまい、消化不良のまま今を迎えているのが正直なところです。
英語の部分を含めた効率化と、Time managementが課題として浮き彫りになったこのFall semesterでした。

元々不真面目な私はともすれば予習復習をすべて投げ出してしまうところですが、なんとかここまでたどり着けたのには以下の要因があったと考えています。

1)強いモチベーション
一番強い要因はここにあると思います。学生たちは自身のキャリアを中断して、さらに高い学費を出してまでここに来ているので、少しでも多く吸収してやる、と必死で食らいつきます。私も家族や日本での同僚に迷惑をかけながら、それでもここに来て勉強したいと思った初志が支えになっています。
2)peer pressure
HSPHではこれがいい意味で働いていました。決してCompetitiveな雰囲気ではなく、しかしCollaborativeに皆で高め合っていこうという雰囲気があります。日本ではありがちな必死で勉強することを揶揄するようなことは全くありません。
3)教育現場におけるIT
上記のような雰囲気をこうしたハード面での整備が下支えしています。講義資料の配布はもちろん、課題や試験の提出は基本computer-basedに行われ、それが効率良く評価の客観性を担保させています。
4)Teaching Assistant(TA)の存在
前述のLabは博士課程の学生がTAとして担当します。また、TAは課題の採点も請け負います。膨大な人材がそれを可能とさせているため、すぐに日本の教育現場全てでそれが実現できるとは考えにくいのですが、こうした屋根瓦式の教育は受講者と教育者の感覚がそう遠くずれていないため効率がいいものです。

今一度教育者としての立場であった自分を振り返ると不十分であったなと反省させられます。日本にも上記のような要素を兼ね備えた教育現場を作りたいと切に思います。疫学や生物統計学だけでなく、アメリカのいい部分を日本に持ち帰り貢献できるように、そのためにもまずはこのFinal examを乗り切ります。

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