今回University of MassachusettsのeICU(telemedicine, tele-ICU)と呼ばれているシステムの見学に行ってきました。
Tele-ICUは今流行りの遠隔診療システムのひとつです。複数のICUの情報がeICUセンターに集約され、集中治療医が不足している地域とネットワークを使って現場とコミュニケーションをとりながら、センターの集中治療医達が治療の手助けを行います。
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03122_03
医学書院さんのこの記事が分かりやすいです。
今回はCraig M. Lillyというこの分野の御大から直接話を聞くことができました。彼のこのJAMAの論文はBenchmarking的な論文です。eICUの導入によって死亡率やガイドライン遵守率が上がるだけでなく、コストなどの削減に役立っているようです。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21576622
またtele-ICUの導入により地域でのICU管理ができるので、転院搬送率が下がる、現場のスタッフがICUで頻回に鳴るアラームの処理に煩わされる率がぐっと下がる、などのメリットも報告されています。
イメージが掴みにくいかもしれませんが、こんな感じでセンターに情報が集められています。ベッド数、占有状況、患者情報、バイタルサイン、治療、検査結果などなどがリアルタイムで更新され続けています。患者さんをモニターで直接見ることもできるため、手技の指示やサポートもネットを介して行うことができたり、身体所見や患者さんの動きで気になる点などもリアルタイムで指摘できたりします。
http://khn.org/news/some-maryland-hospitals-use-intensivists-to-improve-healthcare
より引用
システムにはConsultation型とCo-management型とあり、Consultation型は放射線科医に読影をお願いするような感じで、「eICUのIntensivist達の判断を仰ぐ」という形式です(主治医がはっきりしている場合に向いているシステムだと思われます)。一方、Co-management型は治療方針にeICUの集中治療医達も参画するという形式です。どちらにしてもeICUの医師達が夜間のサポートを行ってくれるので主治医が一日中ずっと張り付く、夜中に電話で起こされる、ということが減ります(これは嬉しいですね)。どちらの方式もアウトカムを改善すると報告されています。
日本でも導入する試みが始まっていますが、主治医感が強い日本で行っていくためには少し時間がかかるように思います。
ただ今後を考えるとこういったシステムは必須になっていくと思われるので、この分野には期待しています。もちろん、こういった論文もあるのでlocalizationは必要ですが。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24819673